リウマチとは?


原因、症状と診断

監修
大阪大学医学部 整形外科教授
越智隆弘先生

監修・編集
東京大学医学部 アレルギーリウマチ内科教授
山本一彦先生




リウマチとは?

 リウマチというと慢性関節リウマチを指すことが多いのですが、これは主に関節が痛んで腫れるという症状が現れます。しかし慢性関節リウマチ(以下リウマチと略します)は全身の病気です。たとえば肺に間質性肺炎というのも起きますし血管炎も起こります。血液を検査してみると全身の炎症反応だということがわかります。
 一番症状が現れるのが関節ですが、その原因はよくわかっていません。関節を滑らかにする滑液を作るのが滑膜で、滑膜は本来非常に薄い膜です。しかしリウマチではこの滑膜が異常に増え関節の中の軟骨、そしてさらに骨が破壊されてしまうというのが主な症状です。リウマチに罹患している方は全国で60万人くらいいると推定されています。
 


具体的な症状

 朝起きたときに手がこわばるということから始まることが多く、関節が腫(は)れたり痛んだりして次第に複数の関節に症状が出ます。特に右と左の関節に対称性に現れます。ある一部の関節だけの病気ではなく全身の炎症が関節に現れたと考えれば右と左に対称性に現れるということは理解しやすいと思います。それから疲れやすくなったりとか発熱です。それほど高い熱ではないですけど微熱が続くとかいうような症状が出ます。
 


リウマチのタイプ

 だいたい20%の患者さんはかなり激しく炎症が起こっても1年か2年ぐらいで症状がおさまってしまいます。 しかし、ほとんどの方は残念ながらよくなったりわるくなったりを繰り返しながら、少しずつ関節破壊が進んでいってしまいます。 そして、10%くらいの方はリウマチが発症してかなり急激に関節が破壊されて関節の機能が障害されてしまいます。


症状に気づいたら早期の来院・診断を

 症状に気づいたらできるだけ早く病院で診断を受けることが望ましいです。最近はできるだけ早くリウマチと診断して、抗リウマチ薬というリウマチの免疫異常を是正する薬を早く飲んでいただくということが、リウマチの骨破壊の進展を押さえるという意味でかなり重要だとわかってきました。


リウマチの原因

 リウマチの原因はわかっていません。たとえばリウマチが遺伝病かといわれると必ずしも遺伝病ではないといわざるをえません。しかしリウマチに遺伝が関係していないかというとそれは関係してるといわざるをえないのです。
 たとえばリウマチの患者さんの頻度は民族を超えてだいたい0.5%から1%です。ところが、一卵性双生児でまったく遺伝的に同じ双子の一方がリウマチになった場合、もう一方がどれくらいリウマチになるかというと、統計によって異なりますが10%から20%の方がリウマチになるといわれています。これはさきほどの0.5%から1%に比べますと高いです。すなわち遺伝的な背景が重要だということを示しています。ところが、もし遺伝病だったら双子の一方がリウマチになったらもう一方も100%なるはずです。ということは逆に遺伝だけではなくて、それに働きかける環境姻子が重要であるということです。そのどちらを原因とするかはむずかしいのですが、おそらく遺伝的な背景でリウマチになりやすいという方はいると思います。しかしながら、それだけで病気になるわけではなくて、それに感染やストレス、ホルモンを含めた環境からの影響が関係し、免疫学的異常を引き起こし、発症すると考えらえています。


リウマチにかかりやすい人は?

 女性に多い病気です。年齢的には30代から50代の方に多く発症します。
 リウマチというのは大きくいうと膠原病(こうげんびょう)という病気のグルー プにはいります。膠原病はまたの名を全身性の自己免疫疾患といいます。たとえば若い、20代の女性はリウマチよりはむしろ大動脈炎や全身性エリテマトーデス(SLE)になりやすいです。
 リウマチは30代から50代に多く、50代過ぎるとむしろ皮膚筋炎、多発筋炎になりやすく、多少年齢によってなりやすい病気が異なりますが、最近は高齢の方のリウマチの発症がかなり増えてきています。きちんとした統計はありませんが、高齢発症になればなるほど男性のリウマチの方の割合も多くなる傾向にあります。若年発症の若年性関節リウマチというのもあります。
 リウマチはある1つの病気のようにみえますが、必ずしも同じものではないと考えられています。症状としてはかなり似ているものがありますが、原因とか遺伝的な背景などは違う可能性があります。


発病のきっかけ

 過労やストレスでリウマチが発症するといわれています。それからウイルス感染です。リウマチの患者さんは妊娠すると少しリウマチの症状がとれることがあるのですが、出産後にまた悪くなる方が多いようです。また今までリウマチにかかってない方でも出産後に発症される方もおられます。つまり出産はリウマチを増悪させる姻子にもなり、発病を誘導する姻子にもなると考えられます。
 過労とかストレスが続いた後にリウマチを発症したという方もおられますし、精神的なものとリウマチの症状もずいぶん相関しているというようなデータもあります。たとえば落語など非常におもしろい話をきいたときに症状が軽くなったということもあるようです。天気との関係でも、晴れの日はリウマチの症状は軽くて、気圧が低くなるとリウマチがわるくなる。昔は気圧のせいだといわれていましたが、ひょっとしたら精神的なものかもしれません。神経と内分泌と免疫というのは非常に密接に結びついているということがいわれており、リウマチの発症・悪化との関係がある可能性があります。
 


リウマチと食事との関係

 特に関係はないと考えられています。民族を超えてリウマチが発症するということを考えても必ずしも食事とは関係ないのではないかと考えられます。患者さんの関心はかなり食事に向けられているのですが、明らかに姻果関係のあるものというものはありません。
 


リウマチと仲良くつきあう

 20%くらいのリウマチの患者さんは、忘れたように症状がなくなってしまいますが、残念ながら大部分の患者さんは治りません。
 気のもちかたとしては、リウマチを克服してやろうというふうに考えると、リウマチのほうが強すぎますので、肉体的にも精神的にもはじき返されてしまいます。リウマチを自分の1つの属性と思っていただいてそれとつきあっていかれるというほうがよいかと思います。
 リウマチを「受容」(受け入れる)するということが重要です。発病初期には自分がリウマチになることを誰も予測していないものですから気が動転しますが、1年たち2年たち、リウマチというものを自分のものとして日常生活に支障がないようにうまくつきあっていくという姿勢のほうが、むしろ上手な病気とのつきあいかたではないかと思います。
 20%くらいの治癒された方以外にも、うまく薬物療法が奏効したり、それからリウマチの活動性が非常に低くコントロールされている方も結構いらっしゃいます。


リウマチの検査

 血液検査では赤沈、CRP、リウマトイド因子などを測定します。CRPは全身の炎症を表す指標です。それからリウマトイド因子は免疫的な異常を示す検査です。これらはリウマチの勢いを表すものですから、なるべく毎回検査をしてください。検査値が落ち着いていれば2,3ヵ月に一度で結構ですが、症状があれば毎回これくらいの検査は必要です。
 骨のレントゲンは年に一度くらいは撮るようにすべきでしょう。なるべく骨の破壊が進まないようにコントロールする必要があります。
 胸のレントゲンも必ず定期的に撮る必要があります。それはリウマチが肺に症状がでて間質性肺炎や胸膜炎という病気を引き起こすこともあるからです。
 血液検査では貧血があるかないかは重要です。炎症とともに貧血が進むというようなこともあります。また、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による消化管の出血が起こることがありますので、これをチェックする意味もあります。
 いくつかの薬を飲んでいますので、肝臓の障害がないかどうかを定期的にチェックすることも必要ですし、同時に抗リウマチ薬では腎臓に症状が出ることがありますので、尿に蛋白が出ていないかということを定期的に検査をする必要もあります。


リウマチの診断基準

判定基準定義
1.朝のこわばり 関節とその周囲で少なくとも1時間以上持続する朝のこわばり
2.3ヶ所以上の関節炎 同時に少なくとも3ヶ所以上で軟部組織の腫脹あるいは関節液貯留(医師による確認)*1
3.手関節炎 手首、MCPあるいはPIP関節の少なくとも1ヶ所での軟部組織腫脹
4.対称性関節炎 同時に両側の同一部位での関節炎 *2
5.リウマトイド結節 骨突起部、伸側表面あるいは関節近傍の皮下結節(医師による確認)
6.血清リウマトイド因子 健常人の陽性率が5%を超えない方法で証明
7.X線変化 PIP、MCP、手首の関節でのRAに典型的なX線変化(障害関節あるいはその近傍に限局するびらんあるいは明らかな骨脱灰
 以上の7項目のうち少なくとも4項目を満たすときにRA(リウマチ)と診断する。項目1〜4までは少なくとも6週間以上存在しなければならない。
*1部位は左右のPIP、MCP、手首、肘、膝、足とMTP(中足趾節間)関節の14ヶ所
*2PIP、MCP、MTP関節は完全に対称性である必要はない。
 1987年のアメリカリウマチ協会の診断基準がかなり使われていて、これは世界のスタンダードとなっています。しかし、これは出来上がったリウマチの診断には非常によいのですが、早期のリウマチの診断としては少し厳密すぎるきらいがあります。
 最近わかってきたことは発病後2年以内にかなり骨の破壊が進むという事実があって、発病早期にリウマチと診断をしてかなり早めに抗リウマチ薬を飲み始めることが治療指針になりつつあります。そういうことからもこの診断基準は少し厳密すぎると考えられます。


リウマチと紛らわしい病気

 リウマチと同じような症状の出る病気はたくさんあり、いくつかの膠原病の発症初期には同じような多発性の関節炎があります。しかし、こういうものはある関節に痛みが出て、また次の関節に移っていくという移動性の関節痛が主な症状で、最終的に骨の破壊まではいかないということが特徴です。
 一番多い病気は、変形性関節症です。たとえば指でいえば特に遠位指節間関節(えんいしせつかんかんせつ)が痛むのが変形性関節症の特徴ですが、リウマチではまずありません。リウマチは近位指節間関節(きんいしせつかんかんせつ)が痛みます。これはリウマチの特徴的な関節の場所です(イラスト)。またレントゲン所見も違います。しかし、変形性関節症でもかなり進みますと、リウマチと似たような形をとることがあり、そのため進んだ変形性関節症は一見するとリウマチと紛らわしいことがあります。それから、1つの関節だけ(単関節)の腫脹(しゅちょう;はれる)をきたす疾患、たとえば痛風、偽痛風があります。いくつかの関節の中の腫瘍もあります。多発関節痛を主訴としてこられた方で白血病の方もまれにあります。
 以上のように関節炎、関節痛というのはそれ以外の全身の病気の反映の可能性もありますので、関節が痛むからリウマチだということではなくて、いくつかの類似の病気を除外する必要があります。
 できたら専門医のもとで診断を受けてから治療方針を決めることが大切です。


ほっと・たいむ 温泉とリウマチ

 温泉にいくとリウマチに効くとかいわれていますね。しかし温泉の力でリウマチが治るということはないだろうといわれています。一方、温泉はリウマチ患者さんによいのかわるいのかといわれれば、間違いなくよいといえます。
 リウマチの患者さんで重要なことは安静と運動ですが、安静というのはからだに 炎症があり消耗していますからきちんと休むということですが、それだけではだめで、関節を動かさなければならない。動かすためには関節が痛いと動きません。急性期の非常に腫(は)れているときはだめですが、急性期を過ぎたときにはむしろ温めると関節は動きやすいのです。
 それから温泉に全身がはいりますと浮力で自分のからだの重さが軽くなります。そうすると重力の負担で動かしにくかった関節を自由に動かすことができます。温めるということと重力をとるということが関節にとってはよいのです。ですからある程度進んだ患者さんのリハビリという意味ではかなり有効な治療法です。それはリウマチの原因をなおすのではなくて、症状を少し軽くして、なおかつ関節の機能を保つというリハビリの意味です。
 もう1つは温泉へいくと気分が晴れますね。そういう意味の気分的な良さというのは重要です。
 しかし温泉には”湯あたり”という現象があって、初期にはむしろからだが適応できない状態になってきて、みた目には悪化することがあります。なるべくでしたらゆっくりと温泉地に滞在するリハビリ型の温泉病院にいかれるほうがよいと思います。ご自分で旅館を予約して短時間でいってくるというのは少しあわただしくて、かえって逆効果になることもありますので注意が必要です。
 また、リウマチのリハビリと他の病気のリハビリとの違いは、リウマチの場合は病気の程度、すなわち炎症がよくなったりわるくなったりしますので、それに対してリハビリをやめたりたくさんやったりと調整しなければなりません。そういう意味では医療機関との連携を含めたリハビリが重要です。